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雇用契約書の電子化のススメ〜パート・アルバイト・派遣社員の大量雇用に推奨する理由とは〜

  • 2023年04月14日
  • 2023年9月28日
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雇用契約書の電子化のススメ
  • 雇用契約締結の対応に時間を取られすぎている。
  • 誰がいつ雇用契約の更新時期を迎えるのか管理し把握するのが大変だ。
  • 他部署ではリモートワークが進んでいるが、ハンコが必要な雇用契約書に対応するため出社しなければならない。

上記のように感じている人事担当者は多いのではないでしょうか。

 

そこでおすすめなのが、雇用契約書を電子化してしまうことです。雇用契約書を電子化することで、雇用契約の対応に費やす時間は大幅に削減でき、誰がいつ雇用契約の更新を迎えるのか把握でき、また雇用契約に関わる業務をリモートワーク化することもできます。
ここでは、雇用契約の電子化について解説します。

 

雇用契約書の電子化とは

まず、雇用契約とは、民法第623条に定義された労務供給契約のことです。日本の民法において、契約は口頭での約束でも成立します。したがって、雇用契約もまた口頭での約束で成立します。しかし、後々の「言った・言っていない」のトラブルを防止するためにも、雇用契約書を作成して取り交わすことが望ましいでしょう。

従来、雇用契約にあたっては、紙の契約書を取り交わすのが一般的でした。しかし、最近では新型コロナウイルス感染拡大の影響や働き方改革によって、リモート勤務やWeb面接といった電子的な手段が普及しています。これに伴い、雇用契約の電子化にも関心が寄せられつつあります。

2020年6月、内閣府・法務省・経済産業省が、契約書への押印は不要である、という見解を示しました。これにより電子契約の有効性が行政によっても裏付けられ、契約書の電子化を推進しやすくなりました。もちろん雇用契約においても電子契約の有効性は変わりません。

契約書を締結する場合は、契約を結ぶ当事者間の合意と署名が必要となります。雇用契約書も同様に、雇用主と労働者の合意と署名が必要になります。紙で雇用契約書を取り交わす場合、「署名」にあたるものは「サイン」や「押印・割印」になります。電子契約にて雇用契約を結ぶ場合の「署名」にあたるものは、電子契約システムにおける「同意する」などのボタンになります。

電子契約は、紙の契約書と比べ簡単に契約手続きが行えます。従来の紙の契約書では、印刷・押印・郵送など細かな業務対応が必要でした。一方で、電子契約は電子データの送受信で契約締結できるシステムとなるため、コスト削減や業務フローの改善が期待できます。
これを機に、雇用契約書の電子化を検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

雇用契約書と労働条件通知書の違いについて

雇用契約書と労働条件通知書の違いに関する画像

企業が人材を雇用する際、雇用契約を取り交わす他に、労働条件通知書の交付が必要になります。

先述したように雇用契約は口頭の約束でも成立します。したがって雇用契約書の作成は必須ではありませんが、トラブル防止のため作成して取り交わすことが望ましいでしょう。

一方、労働条件通知書の交付は労働基準法第15条(労働条件の明示)に定められており、交付が必須となっています。交付する際に明示しなければならない項目も定められており、「労働契約の期間」「就業の場所と従事すべき業務の内容」「賃金の決定、計算、支払の方法、賃金の締切日、支払時期、昇給」などがあります。

労働条件通知書は合意が必要なものではないため、署名や押印は必要ありません。労働条件通知書と雇用契約書をまとめて交付し、労働者側が全ての文面に目を通したうえで、最後に契約内容に合意する、という手続きを取ることも珍しくありません。
労働条件通知書の詳細についてはこちらをご覧ください。

 

 

雇用契約書や労働条件通知書を電子化するメリット

雇用契約書や労働条件通知書を電子化するメリットを解説します。

企業側のメリット

紙書類に必要な印刷、製本、郵送にかかる業務負担・コストの削減

何と言っても、電子化のメリットはコスト削減です。紙の契約書や労働条件通知書を大量に作成して署名と押印を繰り返すこと自体、まず時間がかかります。雇用契約書が複数ページにわたる場合には製本の作業も必要となります。さらに紙で書類を取り交わす場合、ほとんどは郵送に頼ることになるため、大量の書類を発送する手間がかかります。加えて、郵送した書類が行き来する間にはリードタイムが発生します。

特に、パート・アルバイト、派遣社員は「早く働きたい」と考えている方が正社員採用に比べて多く、中には複数応募をしている方もいます。そのため、就業までのリードタイムが長いと離脱されたり、ほかの企業に流れてしまったりする場合もあります。不備などがあり再郵送などになった場合、より離脱のリスクが高まってしまうのです。
電子化した場合、これらの煩雑な作業を一気に解決できます。

例えば、500人のスタッフの雇用契約書を1人あたり5分かけて作成したとすると、5営業日ほどの時間が必要となります。これに加えて郵送や締結依頼などの対応も発生するため、全体としてはより多くの時間がかかります。 これに対して、雇用契約書を電子化した場合は、500人分のスタッフの契約書データをいっきに雇用契約書のテンプレートへ流しこむことができます。送信や締結依頼もシステム化できるため、数時間で対応することができます。契約の更新もシステムで一元管理できるため、業務負担を大幅に軽減できます。

押印が不要になるためリモートワーク対応が可能

次に、押印の不要に伴うメリットもあります。雇用契約書を紙で取り交わす場合、一般的に押印が必要となります。これにより、社内でリモートワークが進んでいても、人事担当者はどうしても出社しなければならない、という事態が発生していました。雇用契約書を電子化すれば押印が不要となるため、人事担当者もリモートワークできるようになります。

パート・アルバイトや派遣社員など多量の契約・更新作業にも効果的

パート・アルバイト、派遣社員といった、有期雇用契約の人材が多い場合、電子化によるメリットの恩恵をいっそう受けやすくなります。有期雇用契約の場合、契約更新のたびに契約書を発行し、送付する必要があります。契約書を紙で管理している場合、数十人、数百人と人材を抱えていると、いつ誰が雇用契約の更新を迎えるのか、把握するだけでも大変です。雇用契約の手続きを電子化すれば、雇用契約の更新期間を迎えた人だけをピックアップし、効率的に契約更新の作業を行うことができます。

電子化にともなうコンプライアンスの強化

さらに、雇用契約書や労働条件通知書の手続きを電子化した場合は、いつ誰が雇用契約書に関わったのかがシステム上に残ります。

紙の契約書では、内容の改ざんなどがあった際、証明することが困難でした。しかし、電子契約であれば「いつ」「誰が」対応したかが記録として残せるため、不正の防止が可能となります。
個々人の心がけに頼るだけでなく、文書の改ざんができないという仕組みを利用することで、コンプライアンスの強化につながっていくのです。

 

労働者側のメリット

電子契約導入における労働者側のメリットとはの画像

スマホで書類の受け取りが可能

雇用契約書や労働条件通知書の電子化は、労働者側にもメリットがあります。
労働者が雇用契約書を紙で受け取った場合、郵送するか、直接提出する必要があります。雇用契約書を電子化すれば、PCかスマートフォンで内容を確認し、同意して送り返せば手続きが終了します。2022年時点で15歳以上のスマートフォン保有率は94%ですから、労働者側が雇用契約書を受け取れない、というケースは稀であると考えてよいでしょう。

企業側・労働者双方のメリット

各雇用契約書類の紛失リスク対策に

その他、企業側・労働者共通のメリットもあります。 契約書は双方が合意し、署名し、有効期間中は互いに保管しておく必要があります。紙で契約書を取り交わした場合、契約書を紛失するリスクがあります。多くの電子契約サービスはクラウドでデータを管理しているため、契約書の紛失リスク対策に有効といえるでしょう。

探し出す手間も削減できる

また、紙で契約書を取り交わしている場合、いざというときに該当の契約書を探す手間もかかります。該当の契約書を探す場合も日時指定や氏名検索などで容易に見つけることができます。

雇用契約書や労働条件通知書を電子化するデメリット

雇用契約書や労働条件通知書を電子化するデメリットについても解説します。

企業側のデメリット

ネットワーク障害発生時に利用ができなくなる

まずはネットワーク障害が発生した際には雇用契約書や労働条件通知書を交付できない、というデメリットです。ネットワーク障害はなかなか起きないものですが、万が一の災害時などには電子契約サービスを利用できなくなるおそれがあります。

労働者側のデメリット

電子契約サービスによってはスマホ対応していないケースも

また、PCやスマートフォンがないと利用できない、というデメリットもあります。特に労働者側は個人用のPCを持っていないこともあるでしょう。先述したようにスマートフォンの普及率は非常に高いため、電子契約サービスを検討する際はスマートフォンに対応しているかどうかも重要なポイントとなります。

人によっては操作に慣れるまで時間を要する

そもそもIT機器に最低限のなじみがないと電子契約サービスの利用が難しい、というデメリットもあります。若年者が多い場合はあまり不安視しなくてもよい要素ですが、スマートフォンの操作にあまり慣れていない高齢者が多い場合は一考する必要があるでしょう。どのように操作すればいいのか分からない、という相手のサポートに忙殺されるようでは本末転倒です。
しかし、電子契約サービスの中には、直感的に操作可能なわかりやすいインターフェースのものもあります。したがって、そのようなサービスを利用すればこの点は払拭できるでしょう。

雇用契約書の電子化はメリットの方が大きい

メリットとデメリットを比べると、雇用契約書の電子化については、メリットの方が大きいと言えるでしょう。デメリットは工夫によって補うこともできます。雇用契約書をはじめとする電子契約導入の際には、発生するデメリットと、それをどう補うか、というところまであらかじめ検討しておくべきでしょう。

雇用契約書の電子化に適した業界

雇用契約書の電子化はどの業界にもメリットがありますが、なかでもメリットを受けやすいのは、以下の特徴を持つ業界です。

  • 大量の人材を雇う
  • 有期雇用契約が多い
  • 複数人の担当者で契約業務に対応している<

大量の人材を雇う場合は、シンプルにツールによる業務負担の軽減という恩恵を大きく受けられます。文書の内容はほとんど変わらず、押印が必要なだけ、という契約書を大量に発行するなら、電子化・自動化によって大幅にコストを削減できます。
アルバイトやパート、派遣などの有期雇用契約をしているスタッフが多い場合、契約更新という業務が発生します。定期的に何度も発生するため、これも電子化・自動化することで大幅にコストを削減できます。
複数人の担当者で契約業務に対応している場合、誰が誰の雇用契約書を担当しているのか、という点が問題になります。紙の場合はチェック表を用意したり、口頭で確認しあったり、といった手続きが必要になります。雇用契約書を電子化すれば、誰が誰の雇用契約書を担当しているのか、ステータスがひと目で分かるようになります。
では、実際にどのような業界が向いているのか、例を3つほど挙げていきます。

人材派遣業界

人材派遣業界は、まさに上記の特徴にぴったり当てはまる業界といえるでしょう。人材派遣会社は大量の人材を雇用し、最適な人材を派遣先企業に有期で派遣します。人材を派遣する際には、人材派遣会社と派遣先企業の間、また人材派遣会社と派遣社員の間、それぞれにおいて契約が結ばれます。そのため、大量の契約書の取り交わしが必須となります。前述「パート・アルバイトや派遣社員など多量の契約・更新作業にも効果的」にもある通り、数多くの契約書の管理や送付、更新作業等も必要になるため、電子化の恩恵はかなり大きいといえるでしょう。

ここからは少し補足となりますが、実は数年前までは企業間の契約は紙の契約書による締結のみで、毎回契約書に署名・捺印しなければなりませんでした。しかし、2021年(令和3年)1月1月より、労働者派遣(個別)契約も電子化したシステムで締結できるようになったのです。

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案等について 令和3年1月1日施行 労働者派遣契約に係る事項の電磁的記録による作成について 労働者派遣契約の当事者は、施行規則第 21 条第3項に基づき、書面により作成することとされている労働者派遣契約について、電磁的記録により作成することも認めることとする。

※「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行 規則の一部を改正する省令案等について」の「2.改正内容 (2)労働者派遣契約に係る事項の電磁的記録による作成について」 より引用
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000673594.pdf

雇用契約書の電子化を進めることで人事担当者の生産性が向上し、採用・稼働までのスピードも上がるため、競合他社に対するアドバンテージも得られます。

小売業界

パート・アルバイトを多く雇う小売業界も、雇用契約書の電子化に向いています。パート・アルバイトの契約更新は、数ヶ月から一年で発生します。一社で数十人、数百人という人数のスタッフを雇うなら、雇用契約書のやりとりを電子化することで人事担当者の負担を大きく減らし、契約更新業務に関する様々なコストを削減できます。

 

電子契約におけるタイムスタンプについて

雇用契約書を電子化する際の懸念事項は、電子化した雇用契約書の改ざんではないでしょうか。データなので改ざんが容易なのではないか、と心配になる方もいらっしゃることでしょう。しかしご安心ください。電子契約のシステムは「タイムスタンプ」という技術によって、契約書の改ざんが事実上不可能となるように作られています。

タイムスタンプとは、文字通り「日時情報」のことです。タイムスタンプが埋め込まれた文書データは、ほんの少しでも内容が変更されるとそのことを検出できます。具体的には、見えないくらいの大きさの文字を追記するだけ、たった1文字変更しただけでも、変更されたことを検出できます。つまり、もし雇用契約書の内容が改ざんされたとしても「改ざんされた事実」をすぐに検出できるのです。改ざんされた契約書はもちろん無効です。タイムスタンプを埋め込んで電子化された雇用契約書の改ざんは、事実上不可能なのです。

また、タイムスタンプは第三者組織である時刻認証局(TSA)が発行しています。時刻認証局はタイムスタンプの信頼性を担保することが業務ですから、タイムスタンプそのものが改ざんされている、という可能性もありえません。したがって、タイムスタンプは文書データの信頼性を担保できる技術となっています。

こう述べると難しい技術のように思えるかもしれません。しかし、実際にはタイムスタンプを用いた文書データの信頼性担保は、システム上で自動化されています。利用にあたって難しいことはありません。

 

雇用契約書電子化には電子契約サービスFAST SIGNがおすすめ

電子契約サービスFAST SIGNの画像

近年のコロナ禍における採用活動で、面接等はオンライン化に完全移行ができていても、結局その後の雇用契約書や労働条件通知書は郵送する、といったオフライン対応が必要になっている企業は多いのではないでしょうか。そんな方は、電子契約サービスを導入いただくのがおすすめです。

株式会社マルジュの提供するFAST SIGNは、新規の雇用契約はもちろん、年間に数度発生する有期雇用契約の更新作業なども含め、大量の契約業務があっても簡単に、そしてリーズナブルに利用することができます。

 

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まとめ

ここでは雇用契約書の電子化について解説しました。雇用契約書を電子化することで、雇用契約業務のコスト削減や、人事担当者のリモートワーク化など、さまざまなメリットを受けられるようになります。

また、オンラインでリモート面接を実施したのち、雇用契約についても電子化することで、採用活動にかかるリードタイムを大幅に短縮することができます。

ぜひこの機会に電子契約サービスを検討してみてください。

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