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契約の際、他社から電子契約を送られる機会が増えたのではないでしょうか。近年では、テレワークの普及によりペーパーレス化が進み、契約書も紙から電子媒体への移行が急速に進んでいます。
しかし、電子契約の導入には適切な手順と押さえておくべきポイントがあるため、しっかりと理解して失敗しないように注意が必要です。
この記事では、電子契約導入のメリット・デメリットをはじめ、電子契約システムの導入手順や注意すべきポイントについても詳しくご説明いたします。
そもそも契約とは何でしょうか?
契約とは何かについて民法の条文を引用しましょう。
(契約の成立と方式)
第522条1. 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2.契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
契約には契約書が必要と思っている方も多いかもしれませんが、契約書がなく口約束でも契約は成立するのです。
では、なぜ契約書は存在するのでしょうか?
それは、取引や約束事について当事者間の同意を文書化し、将来的に争いが生じた場合に同意内容を立証するためです。
お互いに「内容に同意しました」ということを最低限証拠として形に残すのであれば、Microsoft Wordなどで作ったPDFをメールで送信し、それに対して相手方から「同意しました。」という返信をもらうことでも証拠になりえます。
これは紙の契約書を電子的に残したもので、電子契約の一つの方法といえます。
これも電子契約と考えれば、電子契約はむしろ紙の契約書よりはるかに手軽であることがわかるでしょう。
電子契約は単に紙の契約を代替するものではありません。コストを下げる、利便性を高めるといった紙にない特徴があります。
紙の契約書より便利でコストの削減も可能となるのです。
では具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
せっかくリモートワークにしたというのに、契約書類に押印するためだけに出勤しなくてはならないという話はよくあります。
電子契約にすればこのような必要は基本的になくなります。
紙の書類だと、契約内容を確認するためだけに出勤しなくてはならないということも発生します。これも電子契約であれば、リモート環境にある機器で契約書を確認できるため不要になります。
ペーパーレス化の推進は業務の運営においてごく普通のこととなっています。
印刷物を作るには、紙やインク代以外にも書類を保管するためのファイルや棚の購入費がかかります。ペーパーレス化を推進する上で、契約書類は大きなネックとなってきました。
ほとんどの書類はPDF化するなどして破棄しても問題はないものの、契約書類は重要なのでどうしても保存しておく必要があるのです。
これに対して、電子契約では最初から紙を使わないので、ペーパーレス化に大きく寄与します。
紙の契約書を作成するのは手間、コストがかかります。
印刷し、製本テープを使って綴じて、収入印紙を貼り、社名の記入と押印、割り印をして封入します。また、封筒には宛名を書き、場合によっては宛名を記載した返信用の封筒を同封し、切手を貼り郵送します。重要な書類であれば宅配便にしたり、書留にしたりするのでさらに手間がかかります。
製本テープを貼るときにずれたら印刷からやり直す…といったストレスもあります。製本テープは苦手という方も結構いらっしゃるでしょう。
慣れないと1つの契約書を処理するために30分ぐらいかかってしまいます。
また、収入印紙や切手については貯蔵品として定期的に棚卸も必要になります。このように隠れたコストも紙の契約書に付随して
発生します。
これに対して電子契約ならこの種の事務コストは発生しません。電子契約は管理コストの削減に大きく貢献します。
紙の契約書では、偽造や改ざんが起こりやすいといえます。
通常契約書に使う印章(ハンコそのもののこと)は実印ではなく認印を利用するケースが多いでしょう。そのため、どこかで買ってきた印章を使って偽造することが可能となるのです。
また、印影(印章を使って押された模様)に似せて印鑑の再現を行っている印章制作業者も存在します。再現された印影はよく見れば違いがあるのですが、見破れないこともありえます。
電子契約であれば相手方とやり取りをした履歴が残るため、偽造は基本的には起こりません。また、タイムスタンプという契約成立の日時が記録され、その時刻以降に改ざんされていないことを証明できる技術もあります。そのため、後日契約書の内容を変更することはできません。
紙の契約書であれば「この契約は6ヶ月間有効です。」というような条項があった場合に、うっかり契約の更新を忘れていたということが起こります。
しかし、電子契約であれば契約更新の前に「そろそろこの契約書は期限切れになります」というようなお知らせを送ってくれる機能があります。
紙の契約書だと「A社の契約書どこに入れたかな」と探さなくてはならないこともあります。これに対して、電子契約であればシステム上で社名を検索するだけですぐに探し出すことができます。
紙の契約書は物理的に送り届ける必要があるため、郵送の時間のタイムラグがあります。こちらから送って、相手方が処理して返送し手元に届くまでに1週間位かかるのが普通です。
また、途中で紛失するということも起こり得ます。
電子契約であれば即座に届き、紛失する危険もありません。
電子契約書であれば、印紙税や郵送費がかかりません。
印紙税では特に取引に関する契約が大きな悩みになっているケースは多いでしょう。
第7号文書に分類される継続的取引、期間が定められていない取引は多いです。この場合の印紙税は4,000円と高額なので、特に電子契約書にするメリットが大きいのです。
しかし、本当に電子契約にすると印紙税がかからないのだろうか?不安になる方もいらっしゃるかもしれません。
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課税対象となる文書は印紙税法第2条別表第1に記載されており、この中に電子契約書は含まれていないため非課税なのです。
※ただし、電子契約締結後に、その内容を書面に印刷し相手方に交付した場合には、課税文書の作成に該当するため、印紙税がかかります。
電子契約にはメリットが数多くあります。そして大きなデメリットはないといえます。
しかし、あえてデメリットを挙げてみると下記の点があり、念頭においておいたほうがいいでしょう。
これが最大のデメリットといえるかもしれません。
今まで紙で行っていた契約を、システムに変更するため、社内の業務フローが当然変わってきます。
今までの慣れた方法から変えるとなると、新たな方法を覚える必要があるため、苦手に感じる人もいるはずです。また「紙じゃないと信用できない」と導入に反対する人もいるかもしれません。そのような人にメリットを説明して納得させる必要があります。
紙の契約書の場合、日付を過去日にして(=バックデートするともいう)契約することができます。例えば4月10日に契約を行ったにも関わらず、遡って4月1日に契約したことにすることです。
電子契約の場合は必ず正しい日時が契約日時として記録されるため、日付を遡って契約したことにできないことはデメリットといえるかもしれません。
しかし、契約日を過去日に変えるという処理は正しいものではありません。もし、契約日を頻繁にバックデートしているとしたら、電子契約の導入をやめるのではなく、業務のありかたそのものを再考した方がいいかもしれません。
「事業用定期借地契約」「企業担保権の設定又は変更を目的とする契約」「任意後見契約書」に関しては電子契約ができません。
事業用定期借地契約や企業担保権の設定又は変更を目的とする契約などについてはめったに発生するものではないためまず問題にはならないでしょう。
特定の会社が運営するシステムに依存するようになることを、「ベンダーロックインされる」といいます。
ベンダーロックインされると、他の会社のシステムに乗り換えることができなくなります。そのため、システムの料金が値上げされても他に変えることができないなどの問題が起こります。
値上げの問題については、電子契約システムの場合は提供している会社が多くあるため急に値上げが起こることは考えにくいでしょう。
しかし、使い勝手が悪いなどの理由で他社に乗り換えるのは難しいため、最初にどのシステムを選定するかが重要になります。
多くの電子契約システムは月額費用がかかります。
これは当然デメリットとも考えられますが、契約書の印刷、郵送代金、それらの作業にかかる人件費、印紙税と比較するとコスト削減になるのが一般的であるため、デメリットとはいえないでしょう。
電子契約には様々なメリットがあることがおわかりいただけたかと思います。
そして、Microsoft Wordなどで作ったPDFをメールでやり取りしても電子契約として成り立つと説明しました。
しかしながら、書類の電子保存をする場合はe-文書法に求められる4要件を満たすことが望ましいとされています。
e-文書法とは「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の2つの法律をまとめた総称です。
この観点からすると、Microsoft Wordなどで作ったPDFをメールでやり取りする方法は、完全性、機密性、検索性に難があることがわかります。
個人のパソコンのメールの履歴にしか入っていなければ、パソコンの記憶装置が故障したらデータは消失します。
また、ウイルス対策が不完全であれば、機密性にも問題が生じます。そして、該当の担当者のパソコンの中にあるのであれば、その書類を必要とする他の人からは見つけることができません。
このようにe-文書法に定める4要件を満たすのであれば、電子契約には専用のシステムを使うことが望ましいといえます。
ここからは、電子契約のシステムの導入の方法について説明しましょう。
電子契約に限らずシステムを導入するにあたっては、自社の業務にフィットするかどうかを見極める必要があります。
フィットしないとせっかく導入しても不便で使われなくなったり、別のシステムを導入検討しなくてはならなかったりと、大変困難な状況になります。
そのため、下記のような手順を踏んで導入することをお勧めします。
何を目的として電子契約を導入するか?を明確にします。
一言で説明できるような簡潔な目的にすることが望ましいです。
例えばこんな感じです。
「リモートワークに対応するために、電子契約の締結と閲覧がリモートでできるようにする。」
「日々発生する●●契約にかかっている労力を省力化する」
といった明快な目標です。これはシステムを使用する担当者全ての同意を得ておきましょう。
様々なシステムがあり、どれを導入するか迷ったときに「そもそもこういう目的だったよね」と原点に帰って考えることができます。
対象となる契約書の種類、発生頻度、ワークフローについて把握します。
ワークフローについては、契約書の作成から始まり契約書の草案の送付、修正依頼、内容修正、修正の承認、契約への合意、保存、そして最終的な廃棄までの流れを可視化します。
現状を把握し、可視化することによって、導入するシステムにどのような機能が求められるかを明らかにすることができます。
電子契約のシステムには具体的にどんなシステムがあるのかを調べてピックアップします。
実際にシステムを使う人をまじえて、電子契約のシステムにはどんな機能が必要なのか?をまとめます。
しかし、担当者が紙の契約書しか扱ったことがないと、どんな機能が必要なのか?が想定できません。そのため、電子契約のシステムにはどんな機能があるのかをあらかじめまとめておきます。その上で
「この機能は絶対必要」
「この機能はできれば欲しい」
「この機能はなくても困らない」
といったように必要な機能の優先順位決めを行っていきます。
では、電子契約システムにはどのような機能があるのでしょうか?
当事者型とは、契約の当事者がそれぞれ、外部から取得した電子証明書によって本人であることを証明するタイプです。
本人であることを確実に証明できるため、高額な契約や消費貸借契約などに向いています。しかし、コストも手間もかかるため利便性では大きく劣ります。
立会人型とは、メールやSMSなどで本人確認をしてもらうタイプです。
メールアドレスや電話番号で送受信できることが確認できたことによって、本人であると証明するのです。
本人であるかどうかの確認がメールやSMSだけになるため、信頼性にはやや劣るもののコストも手間もかからず手軽に利用できるのが特徴です。
様々な電子契約システムがありますが、それぞれ料金体系が異なります。自社の契約の締結件数を確認した上で、いくらになるのかを確認します。
また、料金プランには主に、月額基本料金のみの「固定料金制」と、月額基本料金に加えて契約書の送信または締結で料金が発生する「従量課金制」の2つに分かれます。
そのため、大量の契約書を交わす企業では、従量課金制の料金プランのシステムを選ぶと余計にコストがかかってしまう恐れがあり、注意が必要です。
【200名以上に送る場合】
月額基本料金:10,000円 従量課金:200円 ⇒50,000円
月額基本料金:30,000円 従量課金: 0円 ⇒30,000円
大量の契約を交わす企業にとっては固定料金制を選択した方がはるかに安く済みます。
運転免許証や公共料金の領収書などの本人確認のための写真を送ってもらう、説明書類を相手に送るといったように契約書類以外のファイルをやり取りする必要があれば、添付ファイルの送付が必須になるでしょう。
多くの相手先に決められた契約書を一斉に送信する機能です。
アルバイトの雇用契約のように、時給といった一部分だけ変更するだけでほぼ内容の変わらない契約書についてテンプレート化する機能です。
対個人向けに使用する場合には必須といえるでしょう。
印影がなくても契約書の効力に影響はありません。しかし、印影が慣習上必要という組織は数多くあります。そのような相手先がある場合は印影を入れられるシステムを選定する必要があります。
依頼を送ったもののまだ返送されてこない契約書や、契約期間が過ぎてしまった契約など何らかの理由により契約が締結されないこともあります。そのため、契約のステータスがどこまでシステムで管理できるかを確認しておくことが望ましいでしょう。
契約を締結するにあたって承認ルートが必要なケースもあります。営業担当者が契約書を作成して、上長である係長が承認して、最後に支店長が承認して初めて先方に契約書を送るといったワークフローになっている場合は、このような承認ルートをシステム上実現できるワークフロー機能があるシステムを選ぶのが望ましいでしょう。
既存の紙の契約書が業務のボトルネックになっていて、この問題を解消することが重要なのかどうか確認します。
既存の紙の契約書をスキャナで読み取って、PDFなどに変換して取り込むことができるシステムもあります。
フィットアンドギャップ分析とは、導入を検討しているシステムが業務とどれだけフィットしているかを確認する作業です。
4.の要件定義をもとに「必要な要件」「重要度」「各社が提供するシステム名」を記入した表を作成します。検討の結果必要でないと判断した要件は記載しません。
フィットアンドギャップ分析の作成例
※重要度について:◎必須 ◯重要 △ある方がのぞましい
重要度 | A社 | B社 | C社 | |
---|---|---|---|---|
立会人型か | ◎ | ◯ | × | ◯ |
価格 | ◯ | 3万円/月 | 7万円/月 | 2万円/月 |
固定料金制か | ◎ | 〇 | 〇 | × 従量課金制 契約書発行220円(税込)/件 |
添付ファイル送付 | ◎ | ◯ | ◯ | × |
一括送信 | ◎ | ◯ | × | ◯ |
スマホ対応 | ◎ | ◯ | ◯ | ◯ |
テンプレート変更 | ◎ | ◯ | × | × |
ステータス管理 | △ | × | ◯ | ◯ |
この例であれば、価格はC社が最も安いのですが、必須機能を全てみたしているのはA社のシステムのみのため、A社のシステムを選定すべきという結論が導かれます。
多くの担当者が関わる業務の仕組みを変えるにあたっては「なぜそうしたのか?」という明確な根拠があることが望ましいです。
業務にかかわる担当者が多くなるほど「わたしはこちらの方がいいと思う」という意見がでてきて紛糾しがちです。
しかし、このフィットアンドギャップ分析を行うことで「これが客観的に一番よい」というコンセンサスを得やすくなるのです。
また、甲乙つけがたい複数のシステムがあった場合、甲乙がつけにくかったシステムだけに焦点を絞って議論することで、全体の意見をまとめやすくなります。
それでも意見がまとまらないときは、1の目的の明確化で定めた「何のためにシステムを導入するのか?」という原点に立ち返って考えることをお勧めします。
原点に立ち返って考えることで、あっさりまとまるかもしれません。
契約に係る相手方に同意を得る必要があります。
もし、相手方が同意してくれない場合は、この記事にて述べたメリットを説明し説得します。それでも同意が得られない場合は、今まで通り紙での契約書を使うことになります。
紙の契約書を全て廃止するのではなく、対応できるようにしておく必要はあるということです。
電子契約にはメリットが数多くあり、そしてデメリットはほぼないことがおわかりいただけたかと思います。
そして、導入の方法についても説明いたしました。是非この記事を電子契約の導入の参考にしていただければ幸いです。
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